野崎と呼ばれた男の身体が、ソファから床に崩れ落ちていた。
もう息もなかった。
「これは、死後10時間、いや、もっと経っているな」
近藤は、死体を観察しながら言った。
テーブルには、ブランデーとグラスが置いてあった。
高野内は、あまり酒の銘柄には詳しくないが、かなり高級そうに見えるブランデーだった。
「鑑識を呼んで、調べてもらいましょうか」
と、高野内が言うと、
「そうじゃな。死体の状況から、毒死だと思うけえ。ひょっとしたら、そのブランデー、毒が入ってーかもしれん」
と、近藤。
そして、近藤は、無線機で、鑑識などを呼ぶことにした。
そのとき、高野内の携帯電話が鳴った。
「はい。もしもし」
と、高野内が出ると、
「高野内君、捜査の進展はどうだ?」
と、聞き覚えのある男の声がした。それは、田村警部の声だった。
「すいません。鴨井圭殺人の手がかりになりそうな人物に当たろうとしたら、次々と殺されまして…」
「黒幕が先手を打って、口封じに殺したのだな」
「だと思います」
「ところで、鴨井圭だが、大阪府警に調べてもらった結果、かなり悪いことしていたという情報を得た」
「悪いことといいますと?」
「依頼人からの調査対象となっている人物や企業の経営者を、ゆすっていたそうだよ。依頼人の誰々に知らせてほしくなければ、金をよこせと」
「かなり卑劣でタチが悪いですね」
「ああ。そうやって得た金で、奢侈生活を送っていたらしいよ」
「じゃあ、鴨井は、そうやって、黒幕をゆすって、殺された可能性が高そうですね」
「そうだな。で、黒幕は、西住グループの経営陣の西住親子の可能性が高いそうだな」
「はい。岡山でも、佐田警視に会いまして、一緒に捜査をしていますが、警視から話を聞いています。でも、逮捕するには、証拠不足でして」
「そうか。まあ、西住は、一筋縄ではいかないと思うぞ。それに、奴らは、暴力団にも顔が利くから、気をつけてくれ」
「はい。その暴力団のうち、谷合という男が殺されました。奴は、連行中の容疑者を乗せた覆面パトカーを、ダンプで跳ね飛ばして殺害した容疑がかかっていたのですが、多分、口封じに消されたのだと思います。情けないことに、やられっぱなしです」
「高野内君が悪いんじゃない。事件が起きている以上、解決への道はあるはずだ。俺は、君たちを信じているよ。俺たちも、引き続き、東京で捜査を続ける」
「わかりました。それでは、失礼します」
そして、高野内は、電話を切り、園町や窈子、江波に、
「警部から電話があった」
と言ったあと、電話の内容を説明した。
それから数分後、地域課の制服警官や鑑識課員が、やってきた。
野崎の遺体は、担架で運ばれた。これから、解剖に回すという。
妹尾は、高野内たちや、真由子、近藤たちに、
「これから、俺と難波君が、近所に、聞き込みをするけえ、みなさんは、県警本部へ戻ってください」
と言った。
そして、鑑識員に、
「グラスや酒とか、毒がないかどうかも調べてくれ!」
鑑識員の1人が、
「わかりました」
と、返事をすると、難波のほうを向き、
「難波君、近所へ聞き込みするぞ」
と言いながら、玄関を出た。
高野内、園町、窈子、江波、真由子、近藤、真野は、覆面車で、岡山県警本部へ戻ることにした。
県警本部に着くと、高野内は、
「今までの事件や、さっきまで起きた事件について、わかっている事実をまとめてみませんか? そうすれば、何か捜査を進めるための手がかりが見つかると思うのですが」
と言った。
「そうですね。15年前の事件から、急行『きたぐに』のトイレで、平山車掌が殺された事件、『サンライズ瀬戸』の個室寝台で、鴨井圭が殺された件、寺山、荻田、谷合が殺された件まで、全部ですね」
と、園町。
それを聞いた近藤は、
「そうじゃのう。さっきの野崎さんが殺された件は、犯人は、15年前のことー真相を口外されたらおえんと思うて、毒入りのブランデー飲ませたんと、わしゃー思うけえのう」
真由子は、
「そうね。じゃあ、高野内さんの言うとおりにして、手がかりを探しましょ」
と、冷静な口調で言った。
今まで起きた事件で知った事実から、解決へ向けた手がかりは見つかるのだろうか。
もう息もなかった。
「これは、死後10時間、いや、もっと経っているな」
近藤は、死体を観察しながら言った。
テーブルには、ブランデーとグラスが置いてあった。
高野内は、あまり酒の銘柄には詳しくないが、かなり高級そうに見えるブランデーだった。
「鑑識を呼んで、調べてもらいましょうか」
と、高野内が言うと、
「そうじゃな。死体の状況から、毒死だと思うけえ。ひょっとしたら、そのブランデー、毒が入ってーかもしれん」
と、近藤。
そして、近藤は、無線機で、鑑識などを呼ぶことにした。
そのとき、高野内の携帯電話が鳴った。
「はい。もしもし」
と、高野内が出ると、
「高野内君、捜査の進展はどうだ?」
と、聞き覚えのある男の声がした。それは、田村警部の声だった。
「すいません。鴨井圭殺人の手がかりになりそうな人物に当たろうとしたら、次々と殺されまして…」
「黒幕が先手を打って、口封じに殺したのだな」
「だと思います」
「ところで、鴨井圭だが、大阪府警に調べてもらった結果、かなり悪いことしていたという情報を得た」
「悪いことといいますと?」
「依頼人からの調査対象となっている人物や企業の経営者を、ゆすっていたそうだよ。依頼人の誰々に知らせてほしくなければ、金をよこせと」
「かなり卑劣でタチが悪いですね」
「ああ。そうやって得た金で、奢侈生活を送っていたらしいよ」
「じゃあ、鴨井は、そうやって、黒幕をゆすって、殺された可能性が高そうですね」
「そうだな。で、黒幕は、西住グループの経営陣の西住親子の可能性が高いそうだな」
「はい。岡山でも、佐田警視に会いまして、一緒に捜査をしていますが、警視から話を聞いています。でも、逮捕するには、証拠不足でして」
「そうか。まあ、西住は、一筋縄ではいかないと思うぞ。それに、奴らは、暴力団にも顔が利くから、気をつけてくれ」
「はい。その暴力団のうち、谷合という男が殺されました。奴は、連行中の容疑者を乗せた覆面パトカーを、ダンプで跳ね飛ばして殺害した容疑がかかっていたのですが、多分、口封じに消されたのだと思います。情けないことに、やられっぱなしです」
「高野内君が悪いんじゃない。事件が起きている以上、解決への道はあるはずだ。俺は、君たちを信じているよ。俺たちも、引き続き、東京で捜査を続ける」
「わかりました。それでは、失礼します」
そして、高野内は、電話を切り、園町や窈子、江波に、
「警部から電話があった」
と言ったあと、電話の内容を説明した。
それから数分後、地域課の制服警官や鑑識課員が、やってきた。
野崎の遺体は、担架で運ばれた。これから、解剖に回すという。
妹尾は、高野内たちや、真由子、近藤たちに、
「これから、俺と難波君が、近所に、聞き込みをするけえ、みなさんは、県警本部へ戻ってください」
と言った。
そして、鑑識員に、
「グラスや酒とか、毒がないかどうかも調べてくれ!」
鑑識員の1人が、
「わかりました」
と、返事をすると、難波のほうを向き、
「難波君、近所へ聞き込みするぞ」
と言いながら、玄関を出た。
高野内、園町、窈子、江波、真由子、近藤、真野は、覆面車で、岡山県警本部へ戻ることにした。
県警本部に着くと、高野内は、
「今までの事件や、さっきまで起きた事件について、わかっている事実をまとめてみませんか? そうすれば、何か捜査を進めるための手がかりが見つかると思うのですが」
と言った。
「そうですね。15年前の事件から、急行『きたぐに』のトイレで、平山車掌が殺された事件、『サンライズ瀬戸』の個室寝台で、鴨井圭が殺された件、寺山、荻田、谷合が殺された件まで、全部ですね」
と、園町。
それを聞いた近藤は、
「そうじゃのう。さっきの野崎さんが殺された件は、犯人は、15年前のことー真相を口外されたらおえんと思うて、毒入りのブランデー飲ませたんと、わしゃー思うけえのう」
真由子は、
「そうね。じゃあ、高野内さんの言うとおりにして、手がかりを探しましょ」
と、冷静な口調で言った。
今まで起きた事件で知った事実から、解決へ向けた手がかりは見つかるのだろうか。