岡山県警本部の会議室では、捜査に関する会議が行なわれていた。
ホワイトボードには、次の名前が並んでいる。
宮川達彦
平山義彦
宮川英人
宮川直美
宮川幸彦
藤野茂
福原真紀子
岩澤正樹
内村浩一
戸塚雅明
平山泰彦
鴨井圭
寺山正伸
荻田勲
谷合正生
野崎征太郎
「西住絡みで、16人も亡くなっているのですね」
窈子が、軽く驚くような表情を見せると、近藤は、
「16人じゃないぞ。もう2人多い18人じゃ」
と言いながら、ホワイトボードに、
『笠松公彦
宮本政一』
と書いた。
「ハムさんと宮本君の命を奪った谷合も許せないが、そういう指示したのは、西住に決まっとるけえのー。奴らのほうこそ、もっと許せん!」
と、近藤が言うと、
「近藤さん、奴らは、宮川達彦君の死の真相を知っていると思われる人物を次々と殺し、さらに新たにそれについて知りえた人物も殺しているわ。また、宮川君の死亡の件や、平山車掌の殺害の件の真相について、勘付いていそうな人物を、また新たに殺す可能性があるんじゃないかしら」
と、真由子は言った。
「危ないといえば、浜田部長もかな? 奴は、西住伸吾とは1つ下の後輩で、同じ美術部にいたんじゃ」
「浜田部長もだけど、平山義彦さんの婚約者だった女性もじゃないの」
「確かに、平山義彦には婚約者がいましたのー。名前は、安倉(アクラ)なんとかといったが、年とったせいか、忘れやすいのー」
近藤は、そう言いながら、手帳を見ようとした。
すると、真由子は、
「安倉美紀でしょ。平山車掌が殺された日の急行『きたぐに』に乗っていた乗客で、大阪まで乗るつもりだったのに、富山で降りたそうよ」
「佐田警視、どこでそういう情報を得たのですか」
高野内が聞くと、
「本庁経由で、新潟県警に問い合わせてみたのよ。で、その安倉美紀という女性は、その夜の『きたぐに』に、新潟から岡山までの乗車券で、乗車していて、平山車掌と同乗していた、島田という53歳の車掌から、大阪までの急行券を買っていたわ。それに、平山車掌が乗務しているかどうかを、島田車掌に聞いていたそうよ」
真由子は、説明した。
「じゃあ、平山車掌殺しに、安倉美紀が関わっていたということはないのですか?」
若い江波が聞くと、真由子は、
「それはないと思うわ。安倉美紀には、平山車掌を殺す動機はないし、平山車掌の爪から検出された皮膚は、殺された寺山正伸のものと同一だそうよ」
「じゃあ、安倉美紀は、平山車掌が殺されたとき、列車内にいることが犯人に知られると、自分も命を狙われると思って、途中の富山駅で降りたのでしょうか?」
と、園町が言うと、
「きっと、そうよ」
と、真由子。
それから間もなく、野崎の自宅周辺での聞き込みをしてた、妹尾と難波の2人が戻ってきた。
「野崎征太郎の死亡推定時刻がわかりました」
と、妹尾が言うと、
「いつ頃かな?」
と、近藤。
「死亡推定時刻は、23日、つまり正確には今日の午前2時から3時の間だそうです。死因は、青酸カリによる毒死で、テーブルの上のブランデーに、青酸カリが混入されていました」
妹尾は、説明した。
「口封じに殺したのじゃな」
と、近藤が言うと、今度は、難波が、
「それもあると思いますが、それだけではないようです。近所で聞いた話だと、野崎元捜査一課長は、自家用車にホステスと思われる女性を頻繁に乗せて、いろいろ走っていたそうです。あと、金遣いもすごかったそうです」
と言った。
「どのような車に乗っていたのですか?」
と、高野内が聞くと、
「トヨタのアリストで、色は黒色です。ホイールやエアロパーツとかに、かなり金をかけていたそうです」
と、難波は答えた。
「かなりの奢侈生活ですね。じゃあ、野崎征太郎は、西住から、多額の口止め料を受け取っていたというわけですか」
と、高野内が言うと、今度は、真由子が、
「そう思うわ」
「じゃあ、野崎征太郎が、口止め料の請求について、だんだん図々しくなってきたのに耐えかねて、殺害した可能性が高そうですね」
「わたしもそう思う」
今度は、近藤が、
「野崎元刑事課長は、藤野巡査部長と一緒に、宮川君殺害や平山教諭殺害、宮川さん一家殺害について、西住親子のために、真相を隠す工作を図ったが、それと引き換えに、多額の口止め料を要求したんじゃろ。それで、藤野巡査部長や、野崎元刑事課長も、殺さなければならなくなったんじゃな」
と言った。
そのときの近藤の表情には、腹立たしい気持ちが出ていた。
野崎は、近藤の元上司だったし、藤野も、仕事でよく顔を合わせる関係だった。そのような警察官が、犯罪事件の真相の隠蔽と引き換えに、口止め料を要求していたと思われるからである。
「じゃあ、藤野巡査部長が、トラックに追突されて死亡したのも、故意の殺人と見ていいのですね」
窈子が、そう言うと、近藤は、
「当たり前じゃ。それによく考えてみてくれ。追突したトラックの運転手、戸塚がいた次田運送は、西大寺にある会社じゃー。旧美作町へ行くのに、国道53号線を通る理由なんて、あるもんか!」
と言った。
それを聞いた難波は、
「確かに、そうですね。西大寺から、旧美作町なら、旧瀬戸町と、今の赤磐市である、旧山陽町、旧赤坂町、旧吉井町を通るのが、一般的で、わざわざ、53号線へ迂回するのは不自然ですね」
「そうじゃろ。戸塚は、藤野巡査部長を口封じに消すために、利用されたんじゃ」
「そして、出所後、戸塚も、口封じに殺されたのですね」
「おそらく、そうじゃ」
近藤がそう言うと、高野内は、
「それじゃ、これから、西住親子に、いろいろ聞いてみませんか? この時間なら、自宅にいませんかね」
すると、近藤は、引き締まった表情で、
「そうじゃな。いろいろ聞き出せば、奴らがボロを出して、それが引き金になれば、次々と真相を知ることができるようになるかもしれんのう」
それを聞いた妹尾は、
「じゃあ、覆面車2台出すから、赤磐市桜団地の西住の自宅へ向かいましょう」
そして、高野内たちや真由子、妹尾、難波、近藤、真野の9人は、覆面パトカーで、出発することにした。
高野内、園町、江波、難波が、妹尾運転の覆面パトカーに乗り、真由子、窈子、近藤は、真野運転の覆面車に乗った。
2台の覆面車は、県道岡山吉井線を走り、赤磐へ向かっている。
西住親子に会うことはできるのだろうか。
ホワイトボードには、次の名前が並んでいる。
宮川達彦
平山義彦
宮川英人
宮川直美
宮川幸彦
藤野茂
福原真紀子
岩澤正樹
内村浩一
戸塚雅明
平山泰彦
鴨井圭
寺山正伸
荻田勲
谷合正生
野崎征太郎
「西住絡みで、16人も亡くなっているのですね」
窈子が、軽く驚くような表情を見せると、近藤は、
「16人じゃないぞ。もう2人多い18人じゃ」
と言いながら、ホワイトボードに、
『笠松公彦
宮本政一』
と書いた。
「ハムさんと宮本君の命を奪った谷合も許せないが、そういう指示したのは、西住に決まっとるけえのー。奴らのほうこそ、もっと許せん!」
と、近藤が言うと、
「近藤さん、奴らは、宮川達彦君の死の真相を知っていると思われる人物を次々と殺し、さらに新たにそれについて知りえた人物も殺しているわ。また、宮川君の死亡の件や、平山車掌の殺害の件の真相について、勘付いていそうな人物を、また新たに殺す可能性があるんじゃないかしら」
と、真由子は言った。
「危ないといえば、浜田部長もかな? 奴は、西住伸吾とは1つ下の後輩で、同じ美術部にいたんじゃ」
「浜田部長もだけど、平山義彦さんの婚約者だった女性もじゃないの」
「確かに、平山義彦には婚約者がいましたのー。名前は、安倉(アクラ)なんとかといったが、年とったせいか、忘れやすいのー」
近藤は、そう言いながら、手帳を見ようとした。
すると、真由子は、
「安倉美紀でしょ。平山車掌が殺された日の急行『きたぐに』に乗っていた乗客で、大阪まで乗るつもりだったのに、富山で降りたそうよ」
「佐田警視、どこでそういう情報を得たのですか」
高野内が聞くと、
「本庁経由で、新潟県警に問い合わせてみたのよ。で、その安倉美紀という女性は、その夜の『きたぐに』に、新潟から岡山までの乗車券で、乗車していて、平山車掌と同乗していた、島田という53歳の車掌から、大阪までの急行券を買っていたわ。それに、平山車掌が乗務しているかどうかを、島田車掌に聞いていたそうよ」
真由子は、説明した。
「じゃあ、平山車掌殺しに、安倉美紀が関わっていたということはないのですか?」
若い江波が聞くと、真由子は、
「それはないと思うわ。安倉美紀には、平山車掌を殺す動機はないし、平山車掌の爪から検出された皮膚は、殺された寺山正伸のものと同一だそうよ」
「じゃあ、安倉美紀は、平山車掌が殺されたとき、列車内にいることが犯人に知られると、自分も命を狙われると思って、途中の富山駅で降りたのでしょうか?」
と、園町が言うと、
「きっと、そうよ」
と、真由子。
それから間もなく、野崎の自宅周辺での聞き込みをしてた、妹尾と難波の2人が戻ってきた。
「野崎征太郎の死亡推定時刻がわかりました」
と、妹尾が言うと、
「いつ頃かな?」
と、近藤。
「死亡推定時刻は、23日、つまり正確には今日の午前2時から3時の間だそうです。死因は、青酸カリによる毒死で、テーブルの上のブランデーに、青酸カリが混入されていました」
妹尾は、説明した。
「口封じに殺したのじゃな」
と、近藤が言うと、今度は、難波が、
「それもあると思いますが、それだけではないようです。近所で聞いた話だと、野崎元捜査一課長は、自家用車にホステスと思われる女性を頻繁に乗せて、いろいろ走っていたそうです。あと、金遣いもすごかったそうです」
と言った。
「どのような車に乗っていたのですか?」
と、高野内が聞くと、
「トヨタのアリストで、色は黒色です。ホイールやエアロパーツとかに、かなり金をかけていたそうです」
と、難波は答えた。
「かなりの奢侈生活ですね。じゃあ、野崎征太郎は、西住から、多額の口止め料を受け取っていたというわけですか」
と、高野内が言うと、今度は、真由子が、
「そう思うわ」
「じゃあ、野崎征太郎が、口止め料の請求について、だんだん図々しくなってきたのに耐えかねて、殺害した可能性が高そうですね」
「わたしもそう思う」
今度は、近藤が、
「野崎元刑事課長は、藤野巡査部長と一緒に、宮川君殺害や平山教諭殺害、宮川さん一家殺害について、西住親子のために、真相を隠す工作を図ったが、それと引き換えに、多額の口止め料を要求したんじゃろ。それで、藤野巡査部長や、野崎元刑事課長も、殺さなければならなくなったんじゃな」
と言った。
そのときの近藤の表情には、腹立たしい気持ちが出ていた。
野崎は、近藤の元上司だったし、藤野も、仕事でよく顔を合わせる関係だった。そのような警察官が、犯罪事件の真相の隠蔽と引き換えに、口止め料を要求していたと思われるからである。
「じゃあ、藤野巡査部長が、トラックに追突されて死亡したのも、故意の殺人と見ていいのですね」
窈子が、そう言うと、近藤は、
「当たり前じゃ。それによく考えてみてくれ。追突したトラックの運転手、戸塚がいた次田運送は、西大寺にある会社じゃー。旧美作町へ行くのに、国道53号線を通る理由なんて、あるもんか!」
と言った。
それを聞いた難波は、
「確かに、そうですね。西大寺から、旧美作町なら、旧瀬戸町と、今の赤磐市である、旧山陽町、旧赤坂町、旧吉井町を通るのが、一般的で、わざわざ、53号線へ迂回するのは不自然ですね」
「そうじゃろ。戸塚は、藤野巡査部長を口封じに消すために、利用されたんじゃ」
「そして、出所後、戸塚も、口封じに殺されたのですね」
「おそらく、そうじゃ」
近藤がそう言うと、高野内は、
「それじゃ、これから、西住親子に、いろいろ聞いてみませんか? この時間なら、自宅にいませんかね」
すると、近藤は、引き締まった表情で、
「そうじゃな。いろいろ聞き出せば、奴らがボロを出して、それが引き金になれば、次々と真相を知ることができるようになるかもしれんのう」
それを聞いた妹尾は、
「じゃあ、覆面車2台出すから、赤磐市桜団地の西住の自宅へ向かいましょう」
そして、高野内たちや真由子、妹尾、難波、近藤、真野の9人は、覆面パトカーで、出発することにした。
高野内、園町、江波、難波が、妹尾運転の覆面パトカーに乗り、真由子、窈子、近藤は、真野運転の覆面車に乗った。
2台の覆面車は、県道岡山吉井線を走り、赤磐へ向かっている。
西住親子に会うことはできるのだろうか。