高野内たち4人は、作業服に着替えて、ショベルを持って、戸塚夫婦の家の庭の松の木の南側を掘ることにした。
午後5時を過ぎていて、日が沈もうとしていた。
周りは暗くなっていた。
「一時、俺たち男3人がショベルを入れるから、君は、懐中電灯で、松の木のそばを照らしてくれ」
と、高野内が言うと、窈子は、
「わかりました」
そして、高野内が、最初のショベルを入れた。
続いて、園町も力いっぱい入れ、江波も同じように入れていった。
松の木の南側の地面がどんどん掘られていく。
窈子は、その周りを懐中電灯で照らしていた。
それを、戸塚文雄、善子の2人も見ていた。
作業開始から10分ほどすると、ショベルが銀色の何かに当たった。
銀色に見えた箇所の周りの土を取り除いてみると、アルミ製のアタッシュケースが現れた。
「どうして、アタッシュケースが?」
と、文雄が驚いたような声を出すと、
「まさか、雅明が埋めたのかしら」
と、善子が言った。
「このケース、開けさせていただきます」
と、高野内は、アタッシュケースのほうへ手を伸ばし、持ち上げた。
そして、アタッシュケースを開いた。
すると、ビニールに包まれた、それほど大きくないものが眼に入った。
よく見ると、ケースに入れたカセットテープを、梱包用のクッションビニールで包んでいるのである。
「どうして、カセットテープなんか、庭に埋めたのかしら」
と、善子は、怪訝そうな顔で言った。
高野内は、それをじっと見ながら、突然、
「戸塚さん、このテープを再生したいので、ラジカセがあれば貸していただきたいのですが」
「わかりました」
と、文雄は言った。
高野内、園町、江波は、掘り出した土を元の場所へ埋めた。
そして、高野内たち4人と、戸塚夫婦は、家に入った。
高野内たち4人は、床の間で待っていた。
少し経つと、文雄と善子の2人が、ラジカセを持ってきた。今では、あまり見かけない形のダブルカセットのラジカセだった。
テープは、A面の始まりに巻き戻されていたので、A面から聴くことにした。
再生ボタンを押して少し経つと、
「西住さん、俺に何を頼みたいのですか?」
と、若い男の声が流れた。
そのとき、
「ま、雅明」
と、文雄と善子の2人は、声を揃えて言った。
戸塚雅明の声に違いないのだろう。
「桜団地駐在所の藤野という警察官が、18日に津山の実家に帰るそうだ」
という男の声。よく聴くと、西住晴伸の声だった。
「18日って、今月ですか?」
と、再び戸塚雅明の声。
「そうだ。今月だ。奴が津山へ向かう途中のどこかで、事故死を装って、奴を消してほしい」
「藤野という警官をですか?」
「そうだ。奴は、国道53号線を通って、津山へ向かうはずだ。だから、奴の車を見つけたら、トラックでぶつかっても構わん。
事故に巻き込まれたように装って、奴を消したいんだ」
「そんなことしたら、俺が捕まってしまうじゃないですか」
「わき見か前方不注意の事故なら、刑期は知れている。出所後の面倒は、一生、俺と息子の伸吾が見てやるから、前科がついても、君が生活に困ることはない。どうしても、藤野を消したいんだ。頼めるだろ」
「わかりました」
そのあと、西住晴伸が、戸塚雅明に、藤野の車の車種や色やナンバーなども教えていた声が聴こえた。
それを聴いた文雄と善子は、
「息子の雅明が…」
と、その場で崩れこんでしまった。
高野内は、
「お父さん、お母さん」
と言ったあと、
「雅明さんは、奴らに利用され、仕方がなく犯行に至ったのです。
雅明さんが悪いのではありません。
確かに、雅明さんがしたことも、許されることではありませんが、本当に許せないのは、西住晴伸と伸吾の2人です。
これで、雅明さんは、奴らに利用されたうえ、口封じに殺害されたことが明らかになりました。
必ず、奴らを逮捕して、雅明さんが浮かばれるようにします」
それを聞いた文雄は、
「刑事さん、あの世で雅明も喜んでいると思います。本当に、ありがとうございました」
と、高野内たちに感謝するように言った。
「雅明、これで、あんたが悪いんじゃないことがわかってもらえたよ」
と、善子は、涙を流しながら言った。
高野内は、カセットテープを取り出して、ケースに収めてから、
「では、このテープは預からせていただきます」
と言った。
そして、高野内たち4人は、戸塚文雄、善子の2人に礼を言って、戸塚夫婦の家の前から去った。
4人は、覆面車で、岡山県警本部に戻るために、通った道を走っていた。
運転しているのは、高野内で、助手席には、園町が座っていた。
園町は、携帯電話で、岡山県警本部に電話し、佐田真由子警視を呼んでもらった。
「佐田ですけど」
と、相手がいうと、
「さっき、津山の戸塚雅明の実家で、西住晴伸と戸塚雅明の会話が録音されたテープを見つけてきました」
と言い、テープの内容を説明した。
すると、真由子は、
「あなたたち、なかなかやるじゃない。妹尾さんたちや近藤さんたちも、証拠を集めて戻ってきたわ」
と、微笑するような声で言った。
「証拠といいますと?」
と、園町が聞き返すと、
「それは、あなたたちが戻ってきたら、見せてあげるわ。西住親子を確実に逮捕できるわ。じゃあ、あなたたちが戻ってくるのを待っているからね」
と、真由子は、笑みを浮かべながら言った。
そして、電話は切れた。
園町は、真由子が言っていたことを、ほかの3人に説明した。
それは、西住晴伸と伸吾を、確実に逮捕できるのだという。
その証拠は一体何だろうか?
高野内たちは、それを楽しみにしていた。
そのとき、高野内運転の覆面車は、岡山県警本部を目指して、夜の国道53号線を走っていた。
県警本部では、どのような証拠が集まっているのか。高野内たちは、それを知りたいという気持ちでいっぱいだった。
午後5時を過ぎていて、日が沈もうとしていた。
周りは暗くなっていた。
「一時、俺たち男3人がショベルを入れるから、君は、懐中電灯で、松の木のそばを照らしてくれ」
と、高野内が言うと、窈子は、
「わかりました」
そして、高野内が、最初のショベルを入れた。
続いて、園町も力いっぱい入れ、江波も同じように入れていった。
松の木の南側の地面がどんどん掘られていく。
窈子は、その周りを懐中電灯で照らしていた。
それを、戸塚文雄、善子の2人も見ていた。
作業開始から10分ほどすると、ショベルが銀色の何かに当たった。
銀色に見えた箇所の周りの土を取り除いてみると、アルミ製のアタッシュケースが現れた。
「どうして、アタッシュケースが?」
と、文雄が驚いたような声を出すと、
「まさか、雅明が埋めたのかしら」
と、善子が言った。
「このケース、開けさせていただきます」
と、高野内は、アタッシュケースのほうへ手を伸ばし、持ち上げた。
そして、アタッシュケースを開いた。
すると、ビニールに包まれた、それほど大きくないものが眼に入った。
よく見ると、ケースに入れたカセットテープを、梱包用のクッションビニールで包んでいるのである。
「どうして、カセットテープなんか、庭に埋めたのかしら」
と、善子は、怪訝そうな顔で言った。
高野内は、それをじっと見ながら、突然、
「戸塚さん、このテープを再生したいので、ラジカセがあれば貸していただきたいのですが」
「わかりました」
と、文雄は言った。
高野内、園町、江波は、掘り出した土を元の場所へ埋めた。
そして、高野内たち4人と、戸塚夫婦は、家に入った。
高野内たち4人は、床の間で待っていた。
少し経つと、文雄と善子の2人が、ラジカセを持ってきた。今では、あまり見かけない形のダブルカセットのラジカセだった。
テープは、A面の始まりに巻き戻されていたので、A面から聴くことにした。
再生ボタンを押して少し経つと、
「西住さん、俺に何を頼みたいのですか?」
と、若い男の声が流れた。
そのとき、
「ま、雅明」
と、文雄と善子の2人は、声を揃えて言った。
戸塚雅明の声に違いないのだろう。
「桜団地駐在所の藤野という警察官が、18日に津山の実家に帰るそうだ」
という男の声。よく聴くと、西住晴伸の声だった。
「18日って、今月ですか?」
と、再び戸塚雅明の声。
「そうだ。今月だ。奴が津山へ向かう途中のどこかで、事故死を装って、奴を消してほしい」
「藤野という警官をですか?」
「そうだ。奴は、国道53号線を通って、津山へ向かうはずだ。だから、奴の車を見つけたら、トラックでぶつかっても構わん。
事故に巻き込まれたように装って、奴を消したいんだ」
「そんなことしたら、俺が捕まってしまうじゃないですか」
「わき見か前方不注意の事故なら、刑期は知れている。出所後の面倒は、一生、俺と息子の伸吾が見てやるから、前科がついても、君が生活に困ることはない。どうしても、藤野を消したいんだ。頼めるだろ」
「わかりました」
そのあと、西住晴伸が、戸塚雅明に、藤野の車の車種や色やナンバーなども教えていた声が聴こえた。
それを聴いた文雄と善子は、
「息子の雅明が…」
と、その場で崩れこんでしまった。
高野内は、
「お父さん、お母さん」
と言ったあと、
「雅明さんは、奴らに利用され、仕方がなく犯行に至ったのです。
雅明さんが悪いのではありません。
確かに、雅明さんがしたことも、許されることではありませんが、本当に許せないのは、西住晴伸と伸吾の2人です。
これで、雅明さんは、奴らに利用されたうえ、口封じに殺害されたことが明らかになりました。
必ず、奴らを逮捕して、雅明さんが浮かばれるようにします」
それを聞いた文雄は、
「刑事さん、あの世で雅明も喜んでいると思います。本当に、ありがとうございました」
と、高野内たちに感謝するように言った。
「雅明、これで、あんたが悪いんじゃないことがわかってもらえたよ」
と、善子は、涙を流しながら言った。
高野内は、カセットテープを取り出して、ケースに収めてから、
「では、このテープは預からせていただきます」
と言った。
そして、高野内たち4人は、戸塚文雄、善子の2人に礼を言って、戸塚夫婦の家の前から去った。
4人は、覆面車で、岡山県警本部に戻るために、通った道を走っていた。
運転しているのは、高野内で、助手席には、園町が座っていた。
園町は、携帯電話で、岡山県警本部に電話し、佐田真由子警視を呼んでもらった。
「佐田ですけど」
と、相手がいうと、
「さっき、津山の戸塚雅明の実家で、西住晴伸と戸塚雅明の会話が録音されたテープを見つけてきました」
と言い、テープの内容を説明した。
すると、真由子は、
「あなたたち、なかなかやるじゃない。妹尾さんたちや近藤さんたちも、証拠を集めて戻ってきたわ」
と、微笑するような声で言った。
「証拠といいますと?」
と、園町が聞き返すと、
「それは、あなたたちが戻ってきたら、見せてあげるわ。西住親子を確実に逮捕できるわ。じゃあ、あなたたちが戻ってくるのを待っているからね」
と、真由子は、笑みを浮かべながら言った。
そして、電話は切れた。
園町は、真由子が言っていたことを、ほかの3人に説明した。
それは、西住晴伸と伸吾を、確実に逮捕できるのだという。
その証拠は一体何だろうか?
高野内たちは、それを楽しみにしていた。
そのとき、高野内運転の覆面車は、岡山県警本部を目指して、夜の国道53号線を走っていた。
県警本部では、どのような証拠が集まっているのか。高野内たちは、それを知りたいという気持ちでいっぱいだった。