西住晴伸、西住伸吾、池上雅典の3人は、逮捕され、県警本部の取調室で、取り調べられることになった。
 西住親子は、晴伸、伸吾ともに、犯行を全面的に否認していた。
 だが、池上雅典が、あっさりと犯行を認め、自供を始めた。
 池上が自供を始めたとき、取調室には、高野内、妹尾、近藤の3人がいた。
「15年前の3月のことです。伸吾さんが、社長と私に、同級生で同じ美術部にいた宮川達彦君の首を絞めて殺したことをほのめかしてきたのです」
 と、池上は言った。
「それで、あんたは何かしたのか?」
 と、高野内。
 池上は、
「はい」
 と答えたあと、
「犯行に関わっていたのは、伸吾さんのほかに、浜田君もだとわかりました。伸吾さんの指示でやったということでした。それで、浜田君には、将来、会社の役員に就任させるという約束の見返りに、その事実を内密にしてもらうことを約束してもらいました」
「それで、浜田は、それ以降、あんたとの約束を守って、犯行の事実を内密したということかね?」
 と、高野内が、強い口調で言うと、
「はい」
 と、池上は答えた。
「で、どうして、西住伸吾は、宮川達彦を殺したのか、知っていたら、教えてくれないか?」
 と、今度は、妹尾が言った。
「はい。当時、伸吾さんは、他の生徒よりは裕福な生活をしていたのかもしれませんが、それでも、家庭生活でも学校生活でも、かなり欲求不満を抱いていたようでした」
 と、池上は言い、それに続いて、
「それで、ぶつけようのない不満の矛先を、気が小さく無抵抗な宮川君に、いつも向けるようになってしまったようでした」
 と、うつむいた姿勢で答えた。
「それがエスカレートして、やってしまったということだな」
 と、妹尾が言うと、
「はい。そうだと思います」
 と、池上。
「寺山正伸を課長にしたのも、浜田と同じ理由かね?」
 と、高野内が聞くと、
「寺山君は、宮川君を殺した件には関わっていませんでしたが、犯行の事実に感づいていました。それで、将来、会社の管理職に就任させることを約束する見返りに、犯行の事実を内密にしてもらいました」
 と、池上は答えた。
「それで、寺山は、事実を内密にしてきたから、西住晴伸は、約束どおり、寺山を雇って、課長にしてやったんだな」
 と、高野内が言うと、
「そうです」
 と、池上。
「宮川達彦君が亡くなったのは、3月12日じゃが、その4日後の16日、宮川君の担任だった平山義彦先生が亡くなっとる。それも、西住晴伸の指示で、殺されたんじゃな?」
 と、今度は、近藤が言った。
「はい。社長が、平山先生が宮川君の死亡について、自殺ではないと、感づいていたことを知って、それで、荻田先生に、平山先生を自殺に見せかけて殺害するように依頼したのです。荻田先生は、社長が議員として所属している政党の支持者だったせいか、あっさりと聞き入れてくれました」
「こうやって、宮川達彦君の死の真相を闇に葬ろうとしたわけじゃな」
「そうです」
 そのように、池上は、犯行の事実を次々と話してくれた。
 取調べは、徹夜で行われた。