午前11時20分頃、高野内と園町は、再び、東京中央郵便局を訪れた。
そして、ゆうちょ銀行の窓口の係員に、警察手帳を見せながら、用件を告げると、店長の中山を呼んでくれた。
しばらくして、中山店長は、高野内たちの前に姿を見せると、
「刑事さん、『ヤマシタジロウ』という人物からの振込みの件で調べてみました」
と言った。
「いつから振込みがありましたか?」
と、高野内が聞くと、中山は、手持ちの封筒から、何かを印刷した紙を取り出して、それを見ながら、
「2011年11月15日ですね」
と答えた。
「その次の振込みはいつでしたか?」
と、再度聞くと、
「同じ2011年の12月15日です」
と、中山は言ったあと、
「そのあとも、毎月15日か14日か13日のいずれかの日に振り込まれていますね、ちなみに、金額は5万円ずつです」
と言った。
「どちらから振り込まれていましたか?」
と、高野内が聞くと、
「いずれも、長野県松本市にある松本T郵便局のATMからです」
と、中山は答えた。
「松本からですか」
と、高野内は、軽く驚いたような声を出した。
「ええ。そうです」
と、中山は言った。
「記録した紙を拝見してよろしいですか?」
と、高野内が言うと、中山は、
「よろしければ、それをお渡しします」
と言いながら、記録を印刷した紙を封筒に入れて、高野内に手渡した。
「ありがとうございます。では、捜査に使わせていただきます」
と、高野内は言った後、改めて、お礼を言って、園町と一緒に東京中央郵便局をあとにした。
そして、分駐所に戻った。
分駐所に戻った頃、時計の針は正午に近づいていた。
貴代子と真希は、退勤していた。
桑田警部と、鶴尾、奈々美はいた。
高野内は、桑田警部のほうを向いて、
「警部、『ヤマシタジロウ』という人物が早崎裕允の通帳に振り込んでいた郵便局と日付、それに、振込みが開始された日がわかりました」
と言った後、ゆうちょ銀行本店の中山店長から預かった紙を封筒ごと、桑田に手渡した。
「この中に、振込みの履歴の記録が印刷された紙が入っています」
と、高野内は言った。
「わかった。これから、俺も確認してみるよ」
と、桑田は言いながら、封筒の中身を取り出した。
そして、桑田は、中に入っていた紙に眼を向けていた。
「『ヤマシタジロウ』という人物は、長野県の松本の郵便局から振り込んでいるようだな」
と、桑田は、記録が印刷された紙を見ながら言った。
「そうです。すべて、同じ郵便局のATMからだそうです」
と、高野内は言った。
すると、桑田は、
「それについて、高野内君は、どう考えるかね?」
と聞いた。
「捜査を進めるうえでですか?」
と、高野内が確認するように聞き返すと、
「そうだ」
と、桑田は答えた。
「まだ、今の段階では、確信は持てませんが、『ヤマシタジロウ』という人物は、長野県の松本市かその周辺の人物だと思われます」
と、高野内が言うと、桑田は、真剣そうな表情で、
「その人物が、早崎裕允を殺害したホシだというのか?」
と言った。
すると、高野内は、
「それは、これから、捜査を進めていかなければわかりませんが、『ヤマシタジロウ』が、早崎裕允にゆすられて、毎月5万円ずつ振り込んだのは、間違いないと、私は思います。ですから、その人物が早崎裕允を殺害した可能性についても、調べてみる必要があります」
と言った。
「俺も、高野内君の意見に同意だよ」
と、桑田は言った後、
「じゃあ、高野内君、園町君、鶴尾君、桜田君の4人に、捜査のために、松本まで行ってもらおう」
と、はっきりとした口調で言った。
そして、高野内、園町、鶴尾、奈々美の4人は、捜査のために、長野県の松本へ向かうことになった。
高野内、園町、鶴尾、奈々美の4人は、新宿駅に行き、14時ちょうど発の特急『スーパーあずさ19号』に乗った。
その列車は、松本行きの特急列車で、E351系電車の12両編成だった。
高野内たち4人は、自由席の車両に乗った。
『スーパーあずさ19号』は、終点、松本までの途中の停車駅は、八王子、甲府、茅野、上諏訪の4箇所のみである。
時計の針が午後2時を差して、まもなく、高野内たちが乗った特急『スーパーあずさ19号』は、新宿駅を出発した。
終点の松本には、16時26分に到着する。
その日も、あまり天候がよくなかったため、松本に近づいていた頃には、窓の外は少し暗くなっていた。
終点の松本駅には、定時に到着した。
松本駅で降りると、改札の外に出た。
「これから、どこへ行くのですか? 高野内さん」
と、鶴尾が聞くと、
「松本中央警察署へ行って、ATMで振り込んだ人物の割り出しに協力してもらおうと思うんだ」
と、高野内は答えた。
そのあと、
「タクシーで松本中央署に向かおう」
と、高野内は言いながら、タクシー乗り場へ向かって歩いた。
園町、鶴尾、奈々美は、高野内のあとを歩いた。
それから、少し経って、高野内は、誰かにぶつかった。
服装から、相手は女性のようだった。
「すみません」
と、高野内は頭を下げた。
すると、相手の女性も、
「すみません」
と言った。
その声は、聞き覚えのある声のように聞こえた。
高野内が、相手の顔のほうに眼を向けると、相手の女性は、佐田真由子警視だった。そばには、岡田俊一警部がいた。
「佐田警視…」
高野内は、軽く驚いたような声を出した。
すると、真由子は、
「高野内さん、松本まで、何の用で来たのかしら」
と、怪訝そうな顔で言った。
「早崎裕允が殺害された件の捜査のためですよ」
と、高野内は答えた。
偶然とはいえ、高野内たちは、驚きの表情は隠せなかった。捜査のために行った先で、捜査一課の捜査官に会ったからである。
「佐田警視は、どうして、松本へ行かれたのですか?」
と、高野内は聞いた。
すると、真由子は、
「それは、鉄道警察隊の人たちには関係ないことよ」
と言った。
「そうですか。では、私たちは、これで失礼します」
と、高野内は言った後、真由子と岡田の前から去った。
そして、高野内たち4人は、タクシー乗り場に行き、タクシーに乗った。
タクシーの後席に座った奈々美は、
「どうして、佐田警視たちがいたのか、気になりますね」
と言った。そのときの奈々美の表情は、ぜひとも知りたいといわんばかりだった。
「俺も同感だが、ずけずけと聞いたら、あとで面倒なことになる」
と、高野内は言った。
その間も、タクシーは、松本市内にある松本中央署へ向かっていた。
松本では、捜査に関する手がかりが、どれだけ得られるのか、そのときの高野内たちには、まだ、はっきりとはわからなかった。
そして、ゆうちょ銀行の窓口の係員に、警察手帳を見せながら、用件を告げると、店長の中山を呼んでくれた。
しばらくして、中山店長は、高野内たちの前に姿を見せると、
「刑事さん、『ヤマシタジロウ』という人物からの振込みの件で調べてみました」
と言った。
「いつから振込みがありましたか?」
と、高野内が聞くと、中山は、手持ちの封筒から、何かを印刷した紙を取り出して、それを見ながら、
「2011年11月15日ですね」
と答えた。
「その次の振込みはいつでしたか?」
と、再度聞くと、
「同じ2011年の12月15日です」
と、中山は言ったあと、
「そのあとも、毎月15日か14日か13日のいずれかの日に振り込まれていますね、ちなみに、金額は5万円ずつです」
と言った。
「どちらから振り込まれていましたか?」
と、高野内が聞くと、
「いずれも、長野県松本市にある松本T郵便局のATMからです」
と、中山は答えた。
「松本からですか」
と、高野内は、軽く驚いたような声を出した。
「ええ。そうです」
と、中山は言った。
「記録した紙を拝見してよろしいですか?」
と、高野内が言うと、中山は、
「よろしければ、それをお渡しします」
と言いながら、記録を印刷した紙を封筒に入れて、高野内に手渡した。
「ありがとうございます。では、捜査に使わせていただきます」
と、高野内は言った後、改めて、お礼を言って、園町と一緒に東京中央郵便局をあとにした。
そして、分駐所に戻った。
分駐所に戻った頃、時計の針は正午に近づいていた。
貴代子と真希は、退勤していた。
桑田警部と、鶴尾、奈々美はいた。
高野内は、桑田警部のほうを向いて、
「警部、『ヤマシタジロウ』という人物が早崎裕允の通帳に振り込んでいた郵便局と日付、それに、振込みが開始された日がわかりました」
と言った後、ゆうちょ銀行本店の中山店長から預かった紙を封筒ごと、桑田に手渡した。
「この中に、振込みの履歴の記録が印刷された紙が入っています」
と、高野内は言った。
「わかった。これから、俺も確認してみるよ」
と、桑田は言いながら、封筒の中身を取り出した。
そして、桑田は、中に入っていた紙に眼を向けていた。
「『ヤマシタジロウ』という人物は、長野県の松本の郵便局から振り込んでいるようだな」
と、桑田は、記録が印刷された紙を見ながら言った。
「そうです。すべて、同じ郵便局のATMからだそうです」
と、高野内は言った。
すると、桑田は、
「それについて、高野内君は、どう考えるかね?」
と聞いた。
「捜査を進めるうえでですか?」
と、高野内が確認するように聞き返すと、
「そうだ」
と、桑田は答えた。
「まだ、今の段階では、確信は持てませんが、『ヤマシタジロウ』という人物は、長野県の松本市かその周辺の人物だと思われます」
と、高野内が言うと、桑田は、真剣そうな表情で、
「その人物が、早崎裕允を殺害したホシだというのか?」
と言った。
すると、高野内は、
「それは、これから、捜査を進めていかなければわかりませんが、『ヤマシタジロウ』が、早崎裕允にゆすられて、毎月5万円ずつ振り込んだのは、間違いないと、私は思います。ですから、その人物が早崎裕允を殺害した可能性についても、調べてみる必要があります」
と言った。
「俺も、高野内君の意見に同意だよ」
と、桑田は言った後、
「じゃあ、高野内君、園町君、鶴尾君、桜田君の4人に、捜査のために、松本まで行ってもらおう」
と、はっきりとした口調で言った。
そして、高野内、園町、鶴尾、奈々美の4人は、捜査のために、長野県の松本へ向かうことになった。
高野内、園町、鶴尾、奈々美の4人は、新宿駅に行き、14時ちょうど発の特急『スーパーあずさ19号』に乗った。
その列車は、松本行きの特急列車で、E351系電車の12両編成だった。
高野内たち4人は、自由席の車両に乗った。
『スーパーあずさ19号』は、終点、松本までの途中の停車駅は、八王子、甲府、茅野、上諏訪の4箇所のみである。
時計の針が午後2時を差して、まもなく、高野内たちが乗った特急『スーパーあずさ19号』は、新宿駅を出発した。
終点の松本には、16時26分に到着する。
その日も、あまり天候がよくなかったため、松本に近づいていた頃には、窓の外は少し暗くなっていた。
終点の松本駅には、定時に到着した。
松本駅で降りると、改札の外に出た。
「これから、どこへ行くのですか? 高野内さん」
と、鶴尾が聞くと、
「松本中央警察署へ行って、ATMで振り込んだ人物の割り出しに協力してもらおうと思うんだ」
と、高野内は答えた。
そのあと、
「タクシーで松本中央署に向かおう」
と、高野内は言いながら、タクシー乗り場へ向かって歩いた。
園町、鶴尾、奈々美は、高野内のあとを歩いた。
それから、少し経って、高野内は、誰かにぶつかった。
服装から、相手は女性のようだった。
「すみません」
と、高野内は頭を下げた。
すると、相手の女性も、
「すみません」
と言った。
その声は、聞き覚えのある声のように聞こえた。
高野内が、相手の顔のほうに眼を向けると、相手の女性は、佐田真由子警視だった。そばには、岡田俊一警部がいた。
「佐田警視…」
高野内は、軽く驚いたような声を出した。
すると、真由子は、
「高野内さん、松本まで、何の用で来たのかしら」
と、怪訝そうな顔で言った。
「早崎裕允が殺害された件の捜査のためですよ」
と、高野内は答えた。
偶然とはいえ、高野内たちは、驚きの表情は隠せなかった。捜査のために行った先で、捜査一課の捜査官に会ったからである。
「佐田警視は、どうして、松本へ行かれたのですか?」
と、高野内は聞いた。
すると、真由子は、
「それは、鉄道警察隊の人たちには関係ないことよ」
と言った。
「そうですか。では、私たちは、これで失礼します」
と、高野内は言った後、真由子と岡田の前から去った。
そして、高野内たち4人は、タクシー乗り場に行き、タクシーに乗った。
タクシーの後席に座った奈々美は、
「どうして、佐田警視たちがいたのか、気になりますね」
と言った。そのときの奈々美の表情は、ぜひとも知りたいといわんばかりだった。
「俺も同感だが、ずけずけと聞いたら、あとで面倒なことになる」
と、高野内は言った。
その間も、タクシーは、松本市内にある松本中央署へ向かっていた。
松本では、捜査に関する手がかりが、どれだけ得られるのか、そのときの高野内たちには、まだ、はっきりとはわからなかった。