10月17日の朝、高野内、園町、鶴尾、奈々美の4人は、東京駅分駐所に出勤した。
分駐所には、桑田警部、貴代子、真希がいた。
午前9時過ぎ、本庁から佐田真由子警視と岡田警部が来た。
まもなく、新幹線『のぞみ218号』の車内で早崎裕允が殺害された事件と、新千歳空港で西井紳二が殺害された事件、岡山駅で広塚貴明が殺害された事件の捜査に関する話し合いが始まった。
「4人で岡山に行ったものの、結局何の進展もなかったわけだな」
と、桑田は不満そうな表情を見せながら言った。
「でも、岡山駅での広塚殺害の件も、新千歳空港での西井殺害の件も、ホシは岩崎正信に違いないと、私は思います」
と、高野内は、落ち着きのない顔で言った。
「しかし、岩崎のアリバイ、なかなか崩せないのはどうしてだ?」
と、桑田は、怪訝そうな顔で言った。
「岡山駅で朝の7時から8時の間に広塚を殺害したあと、その日の13時35分に新千歳空港へ行って西井を殺害するためには、羽田空港には11時半頃までに着いている必要があります。そこで、岩崎が、岡山駅で広塚を殺害したあと、新幹線で新大阪へ移動し、新大阪駅からタクシーで伊丹空港へ行き、伊丹を10時ちょうどに出発する羽田行きの便に搭乗した可能性についても考えてみました」
と、高野内は説明した。
「それで、どうだったのかね?」
と、桑田が言うと、
「残念ながら、その日のその便の飛行機には、岩崎は搭乗していなかったそうです」
と、高野内は言った。
「そうか」
と、桑田は、残念そうに言ったあと、
「岡山空港発の飛行機はどうかね?」
と言った。
すると、今度は、真由子が、
「無理よ」
と言った。
「どうしてですか?」
と、桑田が言うと、
「当時の岡山発羽田行きは、午前中に羽田に到着する便は、岡山を7時10分に出るJAL1680便と、岡山を7時35分に出るANA652便の2本だけど、広塚殺害の時刻が仮に午前7時だとしても、空港へ移動する時間や搭乗手続きの時間とかをいれたら、到底どちらの便にも間に合わないわ」
と、真由子は言った。
それに続いて、貴代子が、
「岩崎正信が、羽田を朝の7時半に出る新千歳行きの飛行機に搭乗していた件はどうなるのでしょうか?」
と、不思議そうな顔で言った。
それを聞いた桑田は、
「岩崎が、7時30分に羽田を出る新千歳行きの便に乗っていたら、岡山駅で広塚が殺害された件については、アリバイ成立のままだな。このままでは、まったく捜査が進まないな」
と、不満そうな表情で言った。
「そうだけど、搭乗者名に岩崎正信の名前があったし、実際に搭乗手続きがされていたのよ」
と、真由子は言った。
「しかし、岩崎が羽田を7時30分に出る新千歳行きに乗っていたのなら、西井が残したメモの『新千歳空港着13時35分』の意味がわからなくなりますね」
と、今度は、真希が言った。
すると、桑田は、
「それじゃ、捜査が進まないぞ」
と言った。
「そうね。ところで、わたしたち捜査一課は、他の事件の捜査でも忙しいの。いったん本庁に戻るわ」
と、真由子は言った。
「他にどういう事件の捜査を担当されているのですか?」
と、高野内が聞くと、
「長野県警と合同で、美ヶ原で起きた殺人事件の捜査も、僕たちが担当しているんだ」
と、今度は、岡田が答えた。
すると、真由子は、少し険しい表情で、
「岡田君、余計なこと話したらだめよ!」
と言った。
「すみません」
と、岡田は、真由子のほうを向いて言った。
「それ、八王子に住む男の人が美ヶ原で殺されたんでしょう」
と、高野内が言うと、
「そうよ。だけど、あなたたちが担当している事件の捜査には関係ないでしょう」
と、真由子は言った。
そして、真由子と岡田の2人は、分駐所から出ていった。本庁へ戻るのだろう。
そのあとは、貴代子と真希は退勤し、高野内、園町、鶴尾、奈々美、それに桑田警部の5人で、捜査に関する話し合いを続けた。
「2年前の岡山駅での広塚貴明殺害の件も、同じく2年前の新千歳空港での西井紳二殺害の件も、今月8日の『のぞみ218号』での早崎裕允殺害の件も、岩崎のアリバイが崩れてないんだろ」
と、桑田が言うと、高野内は、
「そうですが、私は、ホシは、岩崎正信に違いないと確信しています」
と、はっきりとした口調で言った。
「しかしなあ、高野内君、そのセリフ、俺は何度も聞いたが、岩崎のアリバイのほうが成立したままでは、捜査は進まんぞ」
桑田は、少し険しい表情になった。
「今度は、新千歳空港へ行って、北海道警の捜査員に話を聞いてみたいと思うのですが」
と、高野内が言うと、
「新千歳空港で西井が殺害されたときの状況とかについてかね?」
と、桑田は言った。
すると、高野内は、
「そうです」
と答えた。
それを聞いた桑田は、何か難しそうに考えるような表情を見せたが、少し経つと、
「わかった。高野内君、園町君、明日の便のチケットが取れるのなら、明日行きたまえ」
と言った。
「わかりました」
と、高野内は言った。
それに続いて、桑田は、
「鶴尾君と桜田君は、明日、岩崎と接点のありそうな人物をさがして聞き込みをしたまえ」
と、はきはきとした口調で言った。
そのあと、高野内と園町は、旅行代理店へ行き、飛行機のチケットを買いに行った。
分駐所には、桑田警部、貴代子、真希がいた。
午前9時過ぎ、本庁から佐田真由子警視と岡田警部が来た。
まもなく、新幹線『のぞみ218号』の車内で早崎裕允が殺害された事件と、新千歳空港で西井紳二が殺害された事件、岡山駅で広塚貴明が殺害された事件の捜査に関する話し合いが始まった。
「4人で岡山に行ったものの、結局何の進展もなかったわけだな」
と、桑田は不満そうな表情を見せながら言った。
「でも、岡山駅での広塚殺害の件も、新千歳空港での西井殺害の件も、ホシは岩崎正信に違いないと、私は思います」
と、高野内は、落ち着きのない顔で言った。
「しかし、岩崎のアリバイ、なかなか崩せないのはどうしてだ?」
と、桑田は、怪訝そうな顔で言った。
「岡山駅で朝の7時から8時の間に広塚を殺害したあと、その日の13時35分に新千歳空港へ行って西井を殺害するためには、羽田空港には11時半頃までに着いている必要があります。そこで、岩崎が、岡山駅で広塚を殺害したあと、新幹線で新大阪へ移動し、新大阪駅からタクシーで伊丹空港へ行き、伊丹を10時ちょうどに出発する羽田行きの便に搭乗した可能性についても考えてみました」
と、高野内は説明した。
「それで、どうだったのかね?」
と、桑田が言うと、
「残念ながら、その日のその便の飛行機には、岩崎は搭乗していなかったそうです」
と、高野内は言った。
「そうか」
と、桑田は、残念そうに言ったあと、
「岡山空港発の飛行機はどうかね?」
と言った。
すると、今度は、真由子が、
「無理よ」
と言った。
「どうしてですか?」
と、桑田が言うと、
「当時の岡山発羽田行きは、午前中に羽田に到着する便は、岡山を7時10分に出るJAL1680便と、岡山を7時35分に出るANA652便の2本だけど、広塚殺害の時刻が仮に午前7時だとしても、空港へ移動する時間や搭乗手続きの時間とかをいれたら、到底どちらの便にも間に合わないわ」
と、真由子は言った。
それに続いて、貴代子が、
「岩崎正信が、羽田を朝の7時半に出る新千歳行きの飛行機に搭乗していた件はどうなるのでしょうか?」
と、不思議そうな顔で言った。
それを聞いた桑田は、
「岩崎が、7時30分に羽田を出る新千歳行きの便に乗っていたら、岡山駅で広塚が殺害された件については、アリバイ成立のままだな。このままでは、まったく捜査が進まないな」
と、不満そうな表情で言った。
「そうだけど、搭乗者名に岩崎正信の名前があったし、実際に搭乗手続きがされていたのよ」
と、真由子は言った。
「しかし、岩崎が羽田を7時30分に出る新千歳行きに乗っていたのなら、西井が残したメモの『新千歳空港着13時35分』の意味がわからなくなりますね」
と、今度は、真希が言った。
すると、桑田は、
「それじゃ、捜査が進まないぞ」
と言った。
「そうね。ところで、わたしたち捜査一課は、他の事件の捜査でも忙しいの。いったん本庁に戻るわ」
と、真由子は言った。
「他にどういう事件の捜査を担当されているのですか?」
と、高野内が聞くと、
「長野県警と合同で、美ヶ原で起きた殺人事件の捜査も、僕たちが担当しているんだ」
と、今度は、岡田が答えた。
すると、真由子は、少し険しい表情で、
「岡田君、余計なこと話したらだめよ!」
と言った。
「すみません」
と、岡田は、真由子のほうを向いて言った。
「それ、八王子に住む男の人が美ヶ原で殺されたんでしょう」
と、高野内が言うと、
「そうよ。だけど、あなたたちが担当している事件の捜査には関係ないでしょう」
と、真由子は言った。
そして、真由子と岡田の2人は、分駐所から出ていった。本庁へ戻るのだろう。
そのあとは、貴代子と真希は退勤し、高野内、園町、鶴尾、奈々美、それに桑田警部の5人で、捜査に関する話し合いを続けた。
「2年前の岡山駅での広塚貴明殺害の件も、同じく2年前の新千歳空港での西井紳二殺害の件も、今月8日の『のぞみ218号』での早崎裕允殺害の件も、岩崎のアリバイが崩れてないんだろ」
と、桑田が言うと、高野内は、
「そうですが、私は、ホシは、岩崎正信に違いないと確信しています」
と、はっきりとした口調で言った。
「しかしなあ、高野内君、そのセリフ、俺は何度も聞いたが、岩崎のアリバイのほうが成立したままでは、捜査は進まんぞ」
桑田は、少し険しい表情になった。
「今度は、新千歳空港へ行って、北海道警の捜査員に話を聞いてみたいと思うのですが」
と、高野内が言うと、
「新千歳空港で西井が殺害されたときの状況とかについてかね?」
と、桑田は言った。
すると、高野内は、
「そうです」
と答えた。
それを聞いた桑田は、何か難しそうに考えるような表情を見せたが、少し経つと、
「わかった。高野内君、園町君、明日の便のチケットが取れるのなら、明日行きたまえ」
と言った。
「わかりました」
と、高野内は言った。
それに続いて、桑田は、
「鶴尾君と桜田君は、明日、岩崎と接点のありそうな人物をさがして聞き込みをしたまえ」
と、はきはきとした口調で言った。
そのあと、高野内と園町は、旅行代理店へ行き、飛行機のチケットを買いに行った。