10月19日の午後2時頃、高野内、園町、鶴尾、奈々美、それに、桑田警部は、東京駅分駐所にいた。
そのとき、事件の捜査に関する話し合いが行われていた。
時計の針が、2時15分を指して間もない頃、分駐所の電話が鳴った。
「はい。鉄道警察隊東京駅分駐所です」
と、桑田は電話に出た。
それから、5分ほど話したあと、
「わかりました。ありがとうございました」
と言って、電話を切った。
桑田は、電話を切ると、高野内のほうに顔を向けながら、
「さっきの電話は、大阪府警からだが、黒坂由利は、10月8日の午前8時50分頃、新大阪駅東口の近くにあるホテルをチェックアウトしているそうだ。ホテルの従業員も覚えていたし、控えもあるそうだ」
と言った。
「そのあと、本当に京都へ行ったのでしょうか?」
と、高野内が言うと、
「それは、京都府警にも調べてもらうようにお願いしている」
と、桑田は答えた。
それから、10分ほど経ってから、再び分駐所の電話が鳴った。
また桑田が電話に出た。
そして、電話で何か話をしていた途中に、
「黒坂由利のことをおぼえていた人がいたのですね」
と、念入りに確認するように言った。
そのあとも数分、何かを話したあと、
「どうもありがとうございました」
と言って、電話を切った。
電話を切ったあと、桑田は、高野内のほうを向いて、
「さっきの電話は、京都府警からだ。黒坂由利が京都にいたと主張している件だが、11時半前後、黒坂由利は、京都タワーの1階にある土産店や和洋菓子店、漬物店などで買い物をしていたことがわかった。店員の何人かが、黒坂由利の顔をおぼえていたそうだ」
と言った。
「警部、肝心な午前10時前後、黒坂由利は、何をしていたのでしょうか?」
と、高野内が聞くと、
「京都府警が調べた範囲では、その時刻の前後に、黒坂由利を見たという人物は見つかっていないそうだ。だが、京都府警の話によると、黒坂は、その時刻には京都タワーにいたと主張しているんだ。それを証明する人はまだ誰一人いないそうだけどな」
と、桑田は答えた。
それに続いて、桑田は、
「あと、新幹線『のぞみ224号』の車掌と車内販売員が、黒坂由利をおぼえていたそうだ」
と言った。
すると、高野内は、時刻表を出して、ページをめくりながら、
「『のぞみ224号』は、京都発が12時6分ですから、黒坂由利が、その新幹線列車に京都で乗ったとしたら、俺と園町が、I病院で黒坂由利から直接聞いた、12時頃まで京都にいたという発言内容に矛盾はないですね」
と、説明するように言った。
すると、今度は、園町が、
「でも、肝心な10時前後に、黒坂由利を見たという人が誰もいないことと、京都で黒坂をおぼえている人たちが、京都駅の向かいにある京都タワーの店の店員のみなのも気になりますね」
と言った。
それを聞いた桑田は、
「俺も、黒坂由利は疑わしいと思うよ。でも、まだそれだけでは、黒坂をホシだと断定するのも、逮捕するのも難しいぞ!」
とやや強い口調で言った。
そうしているうちに、時計の針は、午後3時に近づいていた。
捜査のための話し合いは、まだ続いていた。
「黒坂由利が新幹線『のぞみ218号』の車内で早崎裕允を殺害したとすれば、黒坂は、岩崎正信の指示で殺害を実行したことになりますが、そういう殺人の依頼を簡単に引き受けますかね?」
高野内は、不思議そうな表情で言った。
すると、園町は、
「高野内さん、どういうことですか? 実行犯として考えられるのは、注射ができる人物で、看護師の黒坂由利の可能性が高いと言ったではありませんか」
と、少し驚いたような表情をした。
「そうだけど、何の見返りもなく、岩崎の指示で実行したとは思えないんだ」
高野内は、真剣そうな表情で言った。
「見返りですか?」
と、今度は、鶴尾が言った。
「ああ、そうだ」
と、高野内は言った。
「多額のカネですかね?」
と、鶴尾が言うと、
「それはまだわからん。カネかもしれないし、岩崎のほうも、黒坂由利のために何かとんでもないことをやっているかもしれない」
と、高野内は答えた。
「岩崎が、黒坂のためにやるとしたら、何が考えられるかね?」
と、今度は、桑田が言った。
すると、高野内は、
「まだわかりませんし、何の見当もつかないのですが、黒坂由利について、もっと調べてみる必要があると思っています」
と言った。
「わかった。高野内と園町は、黒坂由利に何か変わったことがなかったかどうか、調べてみてくれ」
と、桑田は言った。
「では、また明日、調べに行きたいと思います」
と、高野内は言った。
そして、夕方、高野内たちは退勤した。
そのとき、事件の捜査に関する話し合いが行われていた。
時計の針が、2時15分を指して間もない頃、分駐所の電話が鳴った。
「はい。鉄道警察隊東京駅分駐所です」
と、桑田は電話に出た。
それから、5分ほど話したあと、
「わかりました。ありがとうございました」
と言って、電話を切った。
桑田は、電話を切ると、高野内のほうに顔を向けながら、
「さっきの電話は、大阪府警からだが、黒坂由利は、10月8日の午前8時50分頃、新大阪駅東口の近くにあるホテルをチェックアウトしているそうだ。ホテルの従業員も覚えていたし、控えもあるそうだ」
と言った。
「そのあと、本当に京都へ行ったのでしょうか?」
と、高野内が言うと、
「それは、京都府警にも調べてもらうようにお願いしている」
と、桑田は答えた。
それから、10分ほど経ってから、再び分駐所の電話が鳴った。
また桑田が電話に出た。
そして、電話で何か話をしていた途中に、
「黒坂由利のことをおぼえていた人がいたのですね」
と、念入りに確認するように言った。
そのあとも数分、何かを話したあと、
「どうもありがとうございました」
と言って、電話を切った。
電話を切ったあと、桑田は、高野内のほうを向いて、
「さっきの電話は、京都府警からだ。黒坂由利が京都にいたと主張している件だが、11時半前後、黒坂由利は、京都タワーの1階にある土産店や和洋菓子店、漬物店などで買い物をしていたことがわかった。店員の何人かが、黒坂由利の顔をおぼえていたそうだ」
と言った。
「警部、肝心な午前10時前後、黒坂由利は、何をしていたのでしょうか?」
と、高野内が聞くと、
「京都府警が調べた範囲では、その時刻の前後に、黒坂由利を見たという人物は見つかっていないそうだ。だが、京都府警の話によると、黒坂は、その時刻には京都タワーにいたと主張しているんだ。それを証明する人はまだ誰一人いないそうだけどな」
と、桑田は答えた。
それに続いて、桑田は、
「あと、新幹線『のぞみ224号』の車掌と車内販売員が、黒坂由利をおぼえていたそうだ」
と言った。
すると、高野内は、時刻表を出して、ページをめくりながら、
「『のぞみ224号』は、京都発が12時6分ですから、黒坂由利が、その新幹線列車に京都で乗ったとしたら、俺と園町が、I病院で黒坂由利から直接聞いた、12時頃まで京都にいたという発言内容に矛盾はないですね」
と、説明するように言った。
すると、今度は、園町が、
「でも、肝心な10時前後に、黒坂由利を見たという人が誰もいないことと、京都で黒坂をおぼえている人たちが、京都駅の向かいにある京都タワーの店の店員のみなのも気になりますね」
と言った。
それを聞いた桑田は、
「俺も、黒坂由利は疑わしいと思うよ。でも、まだそれだけでは、黒坂をホシだと断定するのも、逮捕するのも難しいぞ!」
とやや強い口調で言った。
そうしているうちに、時計の針は、午後3時に近づいていた。
捜査のための話し合いは、まだ続いていた。
「黒坂由利が新幹線『のぞみ218号』の車内で早崎裕允を殺害したとすれば、黒坂は、岩崎正信の指示で殺害を実行したことになりますが、そういう殺人の依頼を簡単に引き受けますかね?」
高野内は、不思議そうな表情で言った。
すると、園町は、
「高野内さん、どういうことですか? 実行犯として考えられるのは、注射ができる人物で、看護師の黒坂由利の可能性が高いと言ったではありませんか」
と、少し驚いたような表情をした。
「そうだけど、何の見返りもなく、岩崎の指示で実行したとは思えないんだ」
高野内は、真剣そうな表情で言った。
「見返りですか?」
と、今度は、鶴尾が言った。
「ああ、そうだ」
と、高野内は言った。
「多額のカネですかね?」
と、鶴尾が言うと、
「それはまだわからん。カネかもしれないし、岩崎のほうも、黒坂由利のために何かとんでもないことをやっているかもしれない」
と、高野内は答えた。
「岩崎が、黒坂のためにやるとしたら、何が考えられるかね?」
と、今度は、桑田が言った。
すると、高野内は、
「まだわかりませんし、何の見当もつかないのですが、黒坂由利について、もっと調べてみる必要があると思っています」
と言った。
「わかった。高野内と園町は、黒坂由利に何か変わったことがなかったかどうか、調べてみてくれ」
と、桑田は言った。
「では、また明日、調べに行きたいと思います」
と、高野内は言った。
そして、夕方、高野内たちは退勤した。