10月22日の朝7時頃、高野内、園町、鶴尾、奈々美の4人は、東京駅分駐所に出勤後、JRの中央線のホームに向かった。
 中央線のホームに着くと、7時10分発の高尾行きの快速電車に乗った。
 その電車は、東京駅を発車すると、神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿の順に停車した。
 快速電車が、新宿駅に停車すると、高野内、園町、鶴尾、奈々美の4人は降りて、9番ホームへ行き、8時ちょうど発の特急『スーパーあずさ5号』を待った。
 しばらく待つと、『スーパーあずさ5号』が入線してきた。
 その列車は、白色と淡い紫色に塗られたE351系電車だった。
 高野内たち4人は、普通車自由席の車両に乗った。
 8時ちょうどになった時、『スーパーあずさ5号』は、発車し、新宿駅のホームを離れた。
 そして、オレンジ色の帯のある快速電車と何度もすれ違いながら、中央本線を西へ進んだ。
 途中、立川、八王子に停車し、しばらく走ると、神奈川県に入った。
 そして、相模湖駅と藤野駅を通過すると、列車は、山梨県に入った。
 途中、甲府、小渕沢に停車し、少し経つと、長野県に入った。
 そのあと、茅野、上諏訪、岡谷、塩尻の順に停車し、10時38分に、終点の松本駅に到着した。
 『スーパーあずさ5号』が松本駅に着くと、高野内たち4人は降りて、改札の外に出た。
 そして、タクシーで、松本中央署に向かった。
 11時を少し過ぎた頃、高野内たちは、松本中央署に着いた。
 警察署の入口に立っていた制服の警察官に警察手帳を見せて、要件を告げると、
「刑事課へどうぞ」
 と、その警察官は、会釈しながら言った。
 高野内たち4人は、刑事課へ行った。
 すると、林警部と森下刑事が出てきた。
「ご苦労さん」
 と、林警部は会釈したあと、
「美ケ原の事件のホシがわかったそうだな?」
 と、確認するように言った。
「そうです」
 と、高野内は答えた。
「美ケ原で室野祐治を殺害したホシは、岩崎正信に違いありません」
 と、高野内は、はっきりとした口調で言った。
 そして、高野内は、林たちのほうへ顔を向けて、美ケ原での室野祐治殺害の件と、新幹線『のぞみ218号』での早崎裕允殺害の件は、岩崎正信と黒坂由利による交換殺人であることを説明した。
 それを聞いた林は、
「なるほど、それで、お互いにアリバイを作りながら、犯行を成し遂げたのだな」
 と、納得したように言い、それに続いて、
「そして、室野殺害の現場に、口紅とファンデーションが落ちていたのも、捜査員に、ホシが女だと思わせるために、わざと落としたに違いない」
 と、はっきりとした口調で言った。
 それを聞いた高野内は、
「室野が殺害された場所に、口紅とファンデーションが落ちていたのですか?」
 と、少し驚いた顔をした。
「そうだ。現場に口紅とファンデーションがあったことは、外部には知らせていないからな」
 と、林は答えたあと、
「そのせいで、我々も、はじめは、ホシはてっきり女だと思い込んでいたんだよ。殺された室野には、ストーカーの前科があったし」
 と言った。
「なるほど、そうやって、岩崎正信は、室野殺害の容疑者から外れようとしていたわけですね」
 と、今度は、園町が言った。
「そうだろう」
 と、林は言ったあと、
「ところで、昼過ぎには、東京から佐田警視と岡田警部も来られると聞いている。みんな揃ってから、捜査会議をしよう」
「わかりました」
 と、高野内は返事した。