3月29日の午後2時頃、高野内が運転する覆面車は、東京の千代田区内を走っていた。
助手席には、園町が座っていた。
午後2時を過ぎて、しばらくすると、高野内たちが乗った覆面車は、警視庁本部に到着した。
高野内と園町は、覆面車から降りると、捜査一課を訪ねた。
そして、岡田警視と玉森警部に会った。
「高野内さん、園町さん、わざわざ本庁まで、何の用件かな?」
と、岡田が聞くと、
「岩沢雅昭が受けた調査の依頼者のリストがあれば、確認したいのですが」
と、高野内は言った。
「やっぱり、そういうことか」
と、岡田は言ったあと、
「ちょっと待ってもらえる?」
と言ってから、玉森警部と一緒に、いったん高野内たちの前から離れた。
それから、数分後、A4サイズのコピー用紙に何かが印刷されたものを持って、高野内たちの前に戻ってきた。
「我々も、何度も調べなおしたけど、ここ3年間の依頼者は、たったの10人だよ」
と、玉森は言いながら、印刷された紙を、高野内に渡した。
その紙には、依頼者の氏名と住所、それに、依頼があったと思われる年月日が印刷されていた。
確かに、10人だった。
高野内は、それらの依頼者の氏名などに目を向けた。
それから、間もなく、
「あっ!」
と、やや大きな声を出した。
「どうしたのですか? 高野内さん」
と、園町が高野内の顔のほうを向くと、
「依頼者の一人に、高沢レナという名前があるのが気になったんだ」
と、高野内は言った。
依頼者の氏名の中に、「高沢レナ」の文字があった。
住所は、東京都世田谷区である。
「高沢レナというと、もしかして…」
と、園町が言いかけたとき、
「高沢レナがどうしたのかね?」
と、岡田が言った。
すると、高野内は、
「高沢レナって、タレントの高沢レナですよね?」
と、確認するように聞いた。
「そうだよ。だが、彼女は亡くなっているけどね」
と、岡田は答えた。
それを聞いた高野内は、
「確か、和歌山線の電車内で亡くなったのですよね。ニュースで知りましたよ」
と言った。
「そうだが、それが岩沢雅昭が殺害された件と関係あると言いたいのかな?」
と、岡田は言った。
「まだはっきりと断定はできませんが、岩沢雅昭が亡くなった次の日に亡くなっているのが、引っかかりますね」
と、高野内は、はっきりとした口調で言った。
それに続いて、園町が、
「私も同感です」
と言った。
東京都内の神田駅で私立探偵が殺された次の日に、依頼人の一人が、遠く離れた和歌山線の電車内で死亡したのである。
高野内たちは、それが気になってきた。
「高沢レナがどういう内容の依頼をしていたかは、我々も調べている最中だよ」
と、玉森は言った。
「どういう依頼だったのですか?」
と、高野内が聞くと、
「それは、まだはっきりとしたことは言えないな」
と、玉森は答えた。
それから、間もなく、
「私たちは、今、捜査すべき事件が多くて、忙しいんだ。ほかに用件がなければ、分駐所に戻りたまえ」
と、岡田は、高野内の眼を見ながら言った。
「わかりました」
と、高野内と園町は、返事をした。
そして、高野内と園町は、警視庁の本庁舎をあとにして、覆面車で東京駅分駐所に戻った。
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