高野内、園町、鶴尾、奈々美の4人が、分駐所に戻ると、時刻は、12時半を過ぎていた。
高野内たちは、昼食をとった。
昼食を終えて、しばらくの間、分駐所で待機していた。
午後1時半頃、分駐所の電話が鳴った。
「はい。鉄道警察隊東京駅分駐所ですが」
と、桑田警部が電話に出た。
桑田警部は、誰かと話しをしていた。
そして、しばらく話して、電話を切ると、高野内たちのほうへ顔を向けて、
「『のぞみ218号』の車内のホトケの身元がわかったそうだ」
と言った。
高野内は、
「ホトケさんは、何という名前でしょうか」
と聞いた。
すると、桑田警部は、椅子から立ち上がり、ホワイトボードへ向かって歩いた。
そして、ホワイトボードに、
『早崎裕允(ハヤサキ・ヒロミツ)』
と書いた。
そのあと、桑田警部は、鋭い目つきで、
「ホトケさんは、前科があったそうだ」
と言った。
「前科ですか」
と、高野内は、冷静そうな口調で聞き返した。
「そうだ」
と、桑田警部は答えたあと、
「指紋照合を行った結果、ホトケさんには、恐喝の前科があることが判明したそうだよ」
と言った。
それを聞いた高野内が、
「早崎というホトケは、また恐喝でもしようとして、逆に殺されたのでしょうかね」
と言うと、
「今の段階では、何とも言えないだろう」
と、桑田は言った。
「それで、死因は何でしょうか?」
と、高野内が聞くと、
「青酸中毒死だそうだ。ただ、青酸化合物が体内に入った方法は、青酸化合物を飲んだのではなく、皮下注射によるものだ」
と、桑田は、はっきりとした口調で答えた。
「ということは…」
と、園町が言いかけると、
「ホトケさんは、自殺ではなく他殺でしょうか」
と、高野内は言った。
「おそらく、その可能性が高い」
と、桑田は、鋭い目つきで言ったあと、
「早崎裕允死亡の件は、殺人の疑いもあると見て捜査を始める。我々も、捜査に協力することになった」
と、はきはきとした口調で言った。
そのあと、桑田は、
「今回の件の捜査への協力は、高野内、園町、鶴尾、君たちのほか、磯野(イソノ)と堀西(ホリニシ)にも担当してもらう。また、場合によっては、桜田にも協力してもらうかもしれん」
と、高野内のほうを向いて言った。
磯野は、磯野貴代子(イソノ・キヨコ)という47歳の女性警察官で、階級は警部補。同じ鉄道警察隊東京駅分駐所に所属している。
堀西は、堀西真希(ホリニシ・マキ)という26歳の女性警察官で、彼女も同じ東京駅分駐所の隊員である。
そのときは、2人とも、出勤していなかったが、夕方出勤後、捜査に加わる予定だという。
その頃、所轄の警察署からファックスも届いた。
早崎の司法解剖の結果や前科や経歴などが印字されていた。
死亡推定時刻は、午前10時前後だという。
それを知った高野内は、市販の時刻表のページを開き、新幹線の時刻を調べた。
午前10時前後は、『のぞみ218号』は、名古屋停車直前から停車の前後までである。時刻表によると、『のぞみ218号』は、10時2分に名古屋に停車し、10時3分に発車する。
時刻表とファックスの内容を見ながら、高野内は、
「早崎は、名古屋到着直前に殺害された可能性が高いな」
と言った。
すると、園町が、
「じゃあ、犯人は、早崎に青酸化合物を注射して殺害したあと、名古屋駅で降りたのでしょうか」
と言った。
「俺はそのとおりだと思うぜ」
と、高野内は言った。
「それで、殺害に使われた注射器は見つかったのでしょうかね?」
と、鶴尾が言うと、
「いいや。まだ見つかったという報告はない。おそらく、犯人がそのまま持って降りたんだろう」
と、高野内は言った。
「どうして、早崎は殺されたんでしょうかね?」
と、鶴尾が言うと、
「早崎は恐喝の前科がある。また誰かを恐喝しようとして殺されたのかもしれないし、既にまた恐喝をしていて、恐喝の被害者に殺された可能性もあると、俺は思うんだ」
と、高野内は、はっきりとした口調で言った。
「なるほど」
と、鶴尾は、納得したような言い方で言った。
その矢先、桑田警部が、高野内たちのいるほうへ来て、
「先ほど、本庁捜査一課の捜査員から、こちらへ来るという連絡があった。早崎裕允死亡の件の捜査について、おそらく指示を出してくるだろう」
と言った。
「わかりました」
と、高野内は言った。
午後2時半を過ぎた頃、分駐所に男女2人が入ってきた。男性は、30代前半くらいで、ピンストライプの入った濃紺のスーツ姿だった。女性のほうは、30代半ば過ぎくらいだが、美人でスタイルがよさそうだった。カジュアルな服装で、紺色のスカートに黒いストッキングに黒っぽいブーツを履いていた。
男女どちらとも、高野内には見覚えのある顔だった。
「高野内さん、久しぶりね」
と、女性は言った。
その女性は、佐田真由子(サダ・マユコ)という、警視庁捜査一課の警視で、キャリア組の警察官でもある。キャリア組には見えないカジュアルな服装でいることが多い。
スーツ姿の男性は、岡田俊一(オカダ・シュンイチ)という、警視庁捜査一課の警部で、彼もキャリア組だ。
高野内と園町は、2人とも、過去に、一緒に事件の捜査をしたことがある。
「早崎裕允が『のぞみ218号』の車内で死亡していた件については、わたしたち捜査一課も、他殺のセンが極めて濃いとして、殺人事件として捜査することにしたわ」
と、真由子は言った。
それに続いて、
「それで、捜査の指揮は、我々捜査一課がとることにしました。鉄道警察隊の方々にも、協力を要請します」
と、岡田が言った。
これにより、高野内たちは、捜査一課の指揮の下で、早崎裕允死亡の件について、捜査することとなった。
早崎裕允が死亡していた件について、自殺ではなく他殺の可能性が高いということは、捜査一課だけではなく、高野内たちも同じ意見である。
しかし、まだ犯人が誰で、早崎はなぜ殺されたかについては、これから調べて見つけていかなければならない。
(できれば、本庁の捜査員よりも、早く犯人を捜したい)
高野内は、そのような思いが強まっていった。
そして、
「犯人逮捕に全力を注ぎます!」
と、高野内は、真由子や岡田のほうを向いて言った。
高野内たちは、昼食をとった。
昼食を終えて、しばらくの間、分駐所で待機していた。
午後1時半頃、分駐所の電話が鳴った。
「はい。鉄道警察隊東京駅分駐所ですが」
と、桑田警部が電話に出た。
桑田警部は、誰かと話しをしていた。
そして、しばらく話して、電話を切ると、高野内たちのほうへ顔を向けて、
「『のぞみ218号』の車内のホトケの身元がわかったそうだ」
と言った。
高野内は、
「ホトケさんは、何という名前でしょうか」
と聞いた。
すると、桑田警部は、椅子から立ち上がり、ホワイトボードへ向かって歩いた。
そして、ホワイトボードに、
『早崎裕允(ハヤサキ・ヒロミツ)』
と書いた。
そのあと、桑田警部は、鋭い目つきで、
「ホトケさんは、前科があったそうだ」
と言った。
「前科ですか」
と、高野内は、冷静そうな口調で聞き返した。
「そうだ」
と、桑田警部は答えたあと、
「指紋照合を行った結果、ホトケさんには、恐喝の前科があることが判明したそうだよ」
と言った。
それを聞いた高野内が、
「早崎というホトケは、また恐喝でもしようとして、逆に殺されたのでしょうかね」
と言うと、
「今の段階では、何とも言えないだろう」
と、桑田は言った。
「それで、死因は何でしょうか?」
と、高野内が聞くと、
「青酸中毒死だそうだ。ただ、青酸化合物が体内に入った方法は、青酸化合物を飲んだのではなく、皮下注射によるものだ」
と、桑田は、はっきりとした口調で答えた。
「ということは…」
と、園町が言いかけると、
「ホトケさんは、自殺ではなく他殺でしょうか」
と、高野内は言った。
「おそらく、その可能性が高い」
と、桑田は、鋭い目つきで言ったあと、
「早崎裕允死亡の件は、殺人の疑いもあると見て捜査を始める。我々も、捜査に協力することになった」
と、はきはきとした口調で言った。
そのあと、桑田は、
「今回の件の捜査への協力は、高野内、園町、鶴尾、君たちのほか、磯野(イソノ)と堀西(ホリニシ)にも担当してもらう。また、場合によっては、桜田にも協力してもらうかもしれん」
と、高野内のほうを向いて言った。
磯野は、磯野貴代子(イソノ・キヨコ)という47歳の女性警察官で、階級は警部補。同じ鉄道警察隊東京駅分駐所に所属している。
堀西は、堀西真希(ホリニシ・マキ)という26歳の女性警察官で、彼女も同じ東京駅分駐所の隊員である。
そのときは、2人とも、出勤していなかったが、夕方出勤後、捜査に加わる予定だという。
その頃、所轄の警察署からファックスも届いた。
早崎の司法解剖の結果や前科や経歴などが印字されていた。
死亡推定時刻は、午前10時前後だという。
それを知った高野内は、市販の時刻表のページを開き、新幹線の時刻を調べた。
午前10時前後は、『のぞみ218号』は、名古屋停車直前から停車の前後までである。時刻表によると、『のぞみ218号』は、10時2分に名古屋に停車し、10時3分に発車する。
時刻表とファックスの内容を見ながら、高野内は、
「早崎は、名古屋到着直前に殺害された可能性が高いな」
と言った。
すると、園町が、
「じゃあ、犯人は、早崎に青酸化合物を注射して殺害したあと、名古屋駅で降りたのでしょうか」
と言った。
「俺はそのとおりだと思うぜ」
と、高野内は言った。
「それで、殺害に使われた注射器は見つかったのでしょうかね?」
と、鶴尾が言うと、
「いいや。まだ見つかったという報告はない。おそらく、犯人がそのまま持って降りたんだろう」
と、高野内は言った。
「どうして、早崎は殺されたんでしょうかね?」
と、鶴尾が言うと、
「早崎は恐喝の前科がある。また誰かを恐喝しようとして殺されたのかもしれないし、既にまた恐喝をしていて、恐喝の被害者に殺された可能性もあると、俺は思うんだ」
と、高野内は、はっきりとした口調で言った。
「なるほど」
と、鶴尾は、納得したような言い方で言った。
その矢先、桑田警部が、高野内たちのいるほうへ来て、
「先ほど、本庁捜査一課の捜査員から、こちらへ来るという連絡があった。早崎裕允死亡の件の捜査について、おそらく指示を出してくるだろう」
と言った。
「わかりました」
と、高野内は言った。
午後2時半を過ぎた頃、分駐所に男女2人が入ってきた。男性は、30代前半くらいで、ピンストライプの入った濃紺のスーツ姿だった。女性のほうは、30代半ば過ぎくらいだが、美人でスタイルがよさそうだった。カジュアルな服装で、紺色のスカートに黒いストッキングに黒っぽいブーツを履いていた。
男女どちらとも、高野内には見覚えのある顔だった。
「高野内さん、久しぶりね」
と、女性は言った。
その女性は、佐田真由子(サダ・マユコ)という、警視庁捜査一課の警視で、キャリア組の警察官でもある。キャリア組には見えないカジュアルな服装でいることが多い。
スーツ姿の男性は、岡田俊一(オカダ・シュンイチ)という、警視庁捜査一課の警部で、彼もキャリア組だ。
高野内と園町は、2人とも、過去に、一緒に事件の捜査をしたことがある。
「早崎裕允が『のぞみ218号』の車内で死亡していた件については、わたしたち捜査一課も、他殺のセンが極めて濃いとして、殺人事件として捜査することにしたわ」
と、真由子は言った。
それに続いて、
「それで、捜査の指揮は、我々捜査一課がとることにしました。鉄道警察隊の方々にも、協力を要請します」
と、岡田が言った。
これにより、高野内たちは、捜査一課の指揮の下で、早崎裕允死亡の件について、捜査することとなった。
早崎裕允が死亡していた件について、自殺ではなく他殺の可能性が高いということは、捜査一課だけではなく、高野内たちも同じ意見である。
しかし、まだ犯人が誰で、早崎はなぜ殺されたかについては、これから調べて見つけていかなければならない。
(できれば、本庁の捜査員よりも、早く犯人を捜したい)
高野内は、そのような思いが強まっていった。
そして、
「犯人逮捕に全力を注ぎます!」
と、高野内は、真由子や岡田のほうを向いて言った。
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