午後4時過ぎ、高野内が運転する覆面車が足立区竹ノ塚に入った。助手席には、園町が乗っている。
 覆面車は、住宅などが建ち並ぶ竹ノ塚地区の道を走った。
 そして、あるアパートを見つけると、高野内は、車を止めた。
 周囲は、2階建てのアパートや一戸建ての住宅が建ち並んでいた。
「このアパートだな」
 と、高野内は、2階建てのアパートを指差した。そのアパートは、かなり年季の入った建物だった。早崎裕允の自宅があるアパートである。
 高野内と園町は、覆面車から降りると、早崎の部屋に向かった。
 しかし、部屋のドアは施錠されていた。
 そこで、仕方なく、携帯電話で管理人を呼んで、開けてもらうことにした。
 管理人に玄関のドアの鍵を解錠してもらったとき、時刻は4時半頃になっていた。
 高野内たちは、管理人にお礼を言ってから、ドアを開けた。
 玄関には、男物の靴やサンダルが数足あるのみだった。
 そのアパートは、単身向けのワンルームで、部屋のほかは、トイレと風呂と流し台、ガスコンロがあるのみだった。
 高野内は、手袋をはめた手で、部屋にある引き出しを開いた。
 そして、しばらくすると、ゆうちょ銀行の通帳を発見した。普通貯金の通帳で、名義は早崎裕允である。その通帳は、2012年の10月に新しい通帳に切り替えたものだった。
 口座の残高は、7万円余りだった。定期貯金の通帳などは見つからなかった。
 高野内は、その通帳を見ながら、
「ん? これは、もしかすると…」
 と、何かを期待したような言い方で言った。
「どうしたのですか? 高野内さん」
 と、園町は、怪訝そうに言った。
「これは、調べてみる価値があるかもしれないぜ」
 と、高野内は、微笑しながら言った。
「通帳に手がかりがあるのですか?」
 と、園町が言うと、
「まだ調べてみないとわからないが、その可能性はありそうだ」
 と、高野内は答えた。
「その通帳のことについて調べるのですか?」
 と、園町が、改めて聞くように言うと、
「そうだ。明日郵便局に行って調べてもらおう。そうしたら、何かわかるかもしれないぞ」
 と、高野内は言った。
 そのあと、高野内たちは、再度、管理人を呼び、早崎の部屋を施錠したあと、鍵を預かって、覆面車に乗った。
 そして、分駐所に戻ることにした。