高野内と園町は、中央線電車に乗って、新宿へ向かった。
今日は、サラリーマンやOL風の人が少なく、カジュアルな服装の人や親子連れの姿が目立つ。
「今日が土曜日なのを忘れていた。昨日とダイヤが違う」
と、高野内。
「じゃあ、例の通勤特別快速は、運転していませんね」
と、園町が言うと、高野内は、
「多分な』
中央線快速が新宿に着くと、高野内と園町は、電車を降りた。
そして、東京方面の電車が発着する8番ホームへ向かって、階段を下りたり、昇ったりした。
8番ホームの時刻表を見ると、その特別快速は、平日ダイヤの日のみの運行となっていた。
時計を見ると、8時15分頃だった。
「また、池袋に行ってみないか」
と、突然、高野内が言うと、園町は、
「えっ、また、森本愛子に会うのですか?」
「まだいるかどうかはわからんが、会えたら、また話をしたい」
「でも、アリバイは成立していますから、それを崩さない限り、引っぱれませんよ」
「そうだが、何か捜査の手がかりを得られるかもしれないし」
と、高野内の足は、山手線ホームへ向かっていた。
園町も、高野内について行った。
足はだんだんと速くなる。
山手線ホームに昇ると、ちょうど、外回りの電車が入ってきた。
高野内、園町の2人が急いで乗り込むと、電車は、まもなく発車した。
電車は、新大久保、高田馬場、目白の順に止まり、池袋には、8時26分に到着した。
池袋駅で電車を降りた、高野内と園町は、ホテルS池袋へ向かって走った。
(間に合うかな?)
そう思った高野内たちの目に、ホテルS池袋の建物が入ってきた。
高野内たちの足は、自然に、入口へ向かう。
まもなく、入口から、小柄な若い女が出てきた。
コートを着て、片手には、ハンドバッグを、もう片手には、大きな旅行かばんをもっていた。
その女は、よく見ると、森本愛子だった。
高野内は、
「森本さん、ちょうど良かった」
すると、愛子は、高野内たちのほうを振り向き、
「刑事さん、また何の用ですか?」
と、不快そうに言った。
「昨日、あなたが乗車された『富士』号の車掌さんに、あなたを憶えているかどうか聞いてきましたよ」
「で、あたしのこと憶えていたんですか?」
「はい。あなたは、確かに、『富士』が岡山を発車したとき、車掌から車内改札を受けていましたね。あと、名古屋を発車したあと、車掌から、頭痛薬をもらっていましたね」
「でしょう。それで、光恵が殺されたのは、9時ごろでしょう。だったら、『富士』に乗っていた、あたしには、光恵を殺すのは不可能ですわ」
愛子は、はきはきとした話し方で言った。
「森本さん、あなたは、姫路に住んでいるのに、どうして、東京へ行くのに、わざわざ反対方向の岡山まで行って、『富士』に乗ったのですかね?」
「だって、『富士』は、岡山を出ると、名古屋まで止まらないのだから、岡山まで行かないと乗れないでしょ?」
と、愛子が答えると、今度は、園町が、
「確かに、『富士』は、姫路には止まらないが、姫路からなら、『サンライズ瀬戸』か『サンライズ出雲』に乗れるし、新快速で、大阪まで行けば、急行『銀河』にも乗れます。なのに、わざわざ反対方向の岡山まで行って、『富士』で東京行くのは、不自然な選択だと、俺は思うのですが」
「誰がどの列車で東京へ行こうと、勝手でしょ! それに、あたしが、『富士』に乗っていたこと、車掌さんが憶えていたんでしょ。だったら、あたしが、光恵を殺せないことは証明されたじゃないの」
と、愛子は、強気な姿勢を見せるような言い方をした。
今度は、高野内が、
「じゃあ、話を変えます。今日は、どちらへ行かれる予定ですか?」
「喫茶店で時間をつぶしたあと、10時から、サンシャインの展望台へ行くつもりですわ。そのあと、山手線と東急東横線に乗って、自由が丘へ行く予定です」
「今日も、東京に泊まられるのですかね?」
「いいえ。夕方の新幹線で、姫路へ帰りますわ。明日、仕事ですから」
「失礼ですが、お仕事は、何をされているのですか?」
「今は、神戸で、ファッション雑貨の販売をしています。社員登用制度があっても、未だに、パートのままで、なかなか正社員になれませんけど、それでも、今の仕事が気に入っていますわ」
「そうですか。わかりました。では、しっかりと楽しんで、仕事のほうもがんばってくださいね。朝から、引き止めてすいませんでした。失礼します」
高野内は、頭を下げた。園町も、
「失礼します」
と、頭を下げたあと、2人は、愛子の前から去った。
そして、高野内と園町は、池袋駅まで歩き、山手線で、東京駅分駐所へ戻った。
今日は、サラリーマンやOL風の人が少なく、カジュアルな服装の人や親子連れの姿が目立つ。
「今日が土曜日なのを忘れていた。昨日とダイヤが違う」
と、高野内。
「じゃあ、例の通勤特別快速は、運転していませんね」
と、園町が言うと、高野内は、
「多分な』
中央線快速が新宿に着くと、高野内と園町は、電車を降りた。
そして、東京方面の電車が発着する8番ホームへ向かって、階段を下りたり、昇ったりした。
8番ホームの時刻表を見ると、その特別快速は、平日ダイヤの日のみの運行となっていた。
時計を見ると、8時15分頃だった。
「また、池袋に行ってみないか」
と、突然、高野内が言うと、園町は、
「えっ、また、森本愛子に会うのですか?」
「まだいるかどうかはわからんが、会えたら、また話をしたい」
「でも、アリバイは成立していますから、それを崩さない限り、引っぱれませんよ」
「そうだが、何か捜査の手がかりを得られるかもしれないし」
と、高野内の足は、山手線ホームへ向かっていた。
園町も、高野内について行った。
足はだんだんと速くなる。
山手線ホームに昇ると、ちょうど、外回りの電車が入ってきた。
高野内、園町の2人が急いで乗り込むと、電車は、まもなく発車した。
電車は、新大久保、高田馬場、目白の順に止まり、池袋には、8時26分に到着した。
池袋駅で電車を降りた、高野内と園町は、ホテルS池袋へ向かって走った。
(間に合うかな?)
そう思った高野内たちの目に、ホテルS池袋の建物が入ってきた。
高野内たちの足は、自然に、入口へ向かう。
まもなく、入口から、小柄な若い女が出てきた。
コートを着て、片手には、ハンドバッグを、もう片手には、大きな旅行かばんをもっていた。
その女は、よく見ると、森本愛子だった。
高野内は、
「森本さん、ちょうど良かった」
すると、愛子は、高野内たちのほうを振り向き、
「刑事さん、また何の用ですか?」
と、不快そうに言った。
「昨日、あなたが乗車された『富士』号の車掌さんに、あなたを憶えているかどうか聞いてきましたよ」
「で、あたしのこと憶えていたんですか?」
「はい。あなたは、確かに、『富士』が岡山を発車したとき、車掌から車内改札を受けていましたね。あと、名古屋を発車したあと、車掌から、頭痛薬をもらっていましたね」
「でしょう。それで、光恵が殺されたのは、9時ごろでしょう。だったら、『富士』に乗っていた、あたしには、光恵を殺すのは不可能ですわ」
愛子は、はきはきとした話し方で言った。
「森本さん、あなたは、姫路に住んでいるのに、どうして、東京へ行くのに、わざわざ反対方向の岡山まで行って、『富士』に乗ったのですかね?」
「だって、『富士』は、岡山を出ると、名古屋まで止まらないのだから、岡山まで行かないと乗れないでしょ?」
と、愛子が答えると、今度は、園町が、
「確かに、『富士』は、姫路には止まらないが、姫路からなら、『サンライズ瀬戸』か『サンライズ出雲』に乗れるし、新快速で、大阪まで行けば、急行『銀河』にも乗れます。なのに、わざわざ反対方向の岡山まで行って、『富士』で東京行くのは、不自然な選択だと、俺は思うのですが」
「誰がどの列車で東京へ行こうと、勝手でしょ! それに、あたしが、『富士』に乗っていたこと、車掌さんが憶えていたんでしょ。だったら、あたしが、光恵を殺せないことは証明されたじゃないの」
と、愛子は、強気な姿勢を見せるような言い方をした。
今度は、高野内が、
「じゃあ、話を変えます。今日は、どちらへ行かれる予定ですか?」
「喫茶店で時間をつぶしたあと、10時から、サンシャインの展望台へ行くつもりですわ。そのあと、山手線と東急東横線に乗って、自由が丘へ行く予定です」
「今日も、東京に泊まられるのですかね?」
「いいえ。夕方の新幹線で、姫路へ帰りますわ。明日、仕事ですから」
「失礼ですが、お仕事は、何をされているのですか?」
「今は、神戸で、ファッション雑貨の販売をしています。社員登用制度があっても、未だに、パートのままで、なかなか正社員になれませんけど、それでも、今の仕事が気に入っていますわ」
「そうですか。わかりました。では、しっかりと楽しんで、仕事のほうもがんばってくださいね。朝から、引き止めてすいませんでした。失礼します」
高野内は、頭を下げた。園町も、
「失礼します」
と、頭を下げたあと、2人は、愛子の前から去った。
そして、高野内と園町は、池袋駅まで歩き、山手線で、東京駅分駐所へ戻った。